ご挨拶

ご挨拶

三学会構成心臓血管外科専門医認定機構
代表幹事 岡田 健次

 2026年1月より三学会構成心臓血管外科専門医認定機構(以下心血機構)の代表幹事を拝命した、神戸大学の岡田健次です。心血機構では試験問題作成委員として参加させていただきより高いレベルの専門医を輩出できるよう微力ながら尽力し、その後2023年度より前代表幹事の椎谷紀彦先生のもと、心臓血管外科の制度設定という極めて重要な任務を勉強させていただきました。この度、後任としてお努めさせていただくことは専門医個人、認定施設、地域医療の在り方に影響を及ぼす重大な任務であり身の引き締まる思いであり、覚悟を決めて遂行したいと思います。

 安全・安心な心臓血管外科医療を国民の皆様にお届けするための制度設定を行うことでありますが、歴代の代表理事の先生方が全力で取り組まれ、徹底した医療安全/患者安全に対する意識を高め、データベースを活用した制度を確立されました。種本和雄前々代表、椎谷紀彦前代表より引き継ぐ以下を優先度の高い重要業務とします。

1.専門医認定
 標準的な知識を持ち合わせ、チームの一員として標準治療を行える心臓血管外科専門医を育成・認定することで社会に貢献することを目的としています。専門医テキストを作成し(筑波大学平松委員長)、学習効率を高めるよう計画しています。受験者には試験に関する事柄のみならず施設環境、働き方に関する情報をアンケート調査し、若手医師の現場感覚を今後の制度設計にフィードバック活用しています。小児心臓、成人心大血管、血管領域の専門医を毎年100-150人程度輩出し、2026年現在心臓血管外科専門医総数は2,605名(うち女性130名)で、様々な改革を推し進め継続的な対策を進めてゆきます。

2.データベース研究によるvolume-outcome relationshipを根拠とする施設集約化/拠点化の推進
 2024度より基幹施設の施設要件を過去3年間の平均心臓大血管手術を50件から100件に引き上げ、地域医療に与える影響も考慮しつつ緩やかに集約化を進めています。集約化により医療の質を向上させるとともに、若手中堅医師の経験症例数も増加し修練環境を整えることも可能になります。基幹施設は専攻医登録が可能であり、現在最低2年間は基幹施設での勤務を義務とし、専攻医の経験症例の質・量の向上を期待しています。専門医試験受験者の90%程度が集約化を希望しており今後も働き方改革に資する基幹施設の要件を追加しさらに推進してゆく予定であります。

3.働き方改革に対する今後の対応
 働き方改革により限られた勤務時間内で効率的に、しかも医療の質を落とすことなく働く必要がありますが、特に長時間勤務が多い心臓血管外科では難しい舵取りに迫られます。術後のICU管理は最も時間を要する勤務であり、closed ICUの導入を希望する若手医師は90%に及びclosed/semi-closed ICU導入が望まれます。また特定行為修了看護師の協働は医師のタスクシェアのみならず、医療関係者すべての職場環境を改善する可能性があります。上記2点は今後の推移を調査しつつ各種機関と協議し基幹施設要件に組み込む予定であります。

4.外科医へのインセンティブ
 2026年度診療報酬改定「地域医療体制確保加算2」「外科医療確保特別加算」が診療科を明記していただいたことは大きな推進力になる可能性があります。各領域に高難度手術である3階部分を構築し外科医へのインセンティブ制度を確立してゆきたいと思います。

5.外科医のライフタイムマネジメント
 循環器専門医、集中治療専門医とのダブルボードを可能にし、将来の多様な働き方、地域医療への貢献の道筋を構築してゆきたいと思います。

6.サブスペシャリティとしての心臓血管外科専門医の日本専門医機構への移行
 現在移行期でありますが、外科サブスペシャリティと連携しどのような形態が専門医の皆さまに最適か議論を重ね進めてゆきたいと思います。

以上を主なミッションを遂行することで。持続可能な心臓血管外科医療提供体制の維持に貢献してゆきたいと思います。
引き続き皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2026年1月


三学会構成心臓血管外科専門医認定機構
代表幹事 椎谷 紀彦

 2023年1月から、三学会構成心臓血管外科専門医認定機構(以下心血機構)の代表幹事を拝命した、浜松医科大学の椎谷紀彦です。心血機構には、当初は試験問題委員として、2013年からは監事として参画させていただき、2018年からは委員・総務幹事として5年間、前代表幹事である種本和雄先生の下で勉強させていただきました。心血機構のミッションである「外科関連サブスペシャルティとしての心臓血管外科専門医の育成、認定を通じて、社会に貢献すること」を、皆様と共有しながら精一杯努めて参りますので、ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。


 心血機構は2001年、欧米の専門医制度に匹敵する専門医資格と、それを実現するためのプログラムの確立を目指し、学会から独立した組織として、日本胸部外科学会・日本心臓血管外科学会・日本血管外科学会の代表で構成され発足しました。当初は日本胸部外科学会の認定医・指導医制度を引き継ぐ形でした。初代の北村惣一郎先生と第2代の龍野勝彦先生は、心血機構の制度設計とシステム構築に尽力され、専門医の質維持のため再教育プログラム・再認定規定の制定、医療安全講習の充実、認定基準の見直しに取り組まれました。第3代の幕内晴朗先生は、専門医のさらなる質向上のため、更新規定や修練指導者資格の基準制定、修練医の職場環境の改善、施設集約化に尽力されました。第4代の橋本和弘先生は、専門医制度にNCDシステムの活用を導入され、専門医新規・更新申請手続きの大幅な簡素化及び専門医の質の管理に関する精緻化を成し遂げられました。また先生のご尽力により発刊された「心臓血管外科専門医認定試験過去問題集」は、専攻医教育の大きなツールとなっています。第5代の種本和雄先生は、新専門医制度における外科サブスペシャルティとしての心臓血管外科領域の整備基準を策定され、日本専門医機構の方針転換や体制刷新による混乱にCOVID-19パンデミックが加わった大変困難な局面の中、第1期生の認定を無事終えるという、大変大きな仕事を成し遂げられました。また、認定登録医制度や専門医再取得制度を整備し、さらには日本循環器学会との困難な交渉を経て、心臓血管外科専門医による循環器専門医取得への道を広げてくださいました。バトンを受け取った私に与えられた使命は、諸先輩が築いてこられた制度を継承し、時代のニーズに即した形でミッションを果たしていくことであると考えております。


 心臓血管外科は、外科サブスペシャルティのなかでも特に志望者不足が著しい領域です。要因は沢山あると思いますが、修練期間の長さ、拘束時間の長さ、責任の重さ、リスクの高さにもかかわらず、目に見えて得られる対価が他の領域と変わらない、といった点が共通の認識かと思います。修練期間の長さや責任の重さは、やりがいの大きさという、職業本来が持つ魅力と表裏一体なのですが、現状では、これら負の側面が魅力を大きく凌駕しているのだと思います。昨今の働き方改革や循環器病対策推進基本計画といった施策は、この現状を打破する良い契機になり得ます。ただし、最優先事項である医療の質と量の維持を実現しつつ、これらの新しい時代のニーズに応えていくためには、施設の集約化を通した、医療の質と量の維持、タスクシェアによる良い職場環境の実現、専門研修の効率化が不可避であると考えます。

 新専門医制度への対応で、専門医取得までの期間は短縮されました。しかし、この軌道修正によって、専門医像の見直しも余儀なくされており、これへの対応も急務です。心血機構設立当初の理念である、欧米の制度に匹敵する専門医、すなわち独立して手術を指揮することが出来る外科医には、現在の修練指導者資格が該当すると考えられますが、今後は、これをより明確にしていくことも必要であると思います。

 我が国の制度は、胸部外科をベースとする欧米とは異なり、呼吸器外科とは袂を分かち、心臓外科領域と血管外科領域両者を内包したものとなっています。これには、心血機構設立当時の我が国の状況が色濃く反映されています。時は流れ、血管外科領域の専門性が我が国でも確立されていますが、成人心臓外科と血管外科にはオーバーラップ部分が多く、また社会の高齢化・生活習慣病の増加に伴い、心臓病と血管病の両方を有する患者も増加しています。心臓血管外科専門医として両者を内包することは、この点において大変有意義なことだと考えます。かかる状況に対応するためには、先天性心疾患を専門とする先生方を含め、全ての領域の先生方にとって公平な制度を構築していかなければなりません。外科専門医の2階である心臓血管外科専門医の上に、専門領域を反映した3階部分を整備し、集中治療管理を含めたinterdisciplinary teamを育成していくことも、心臓血管外科医療の未来を見据えて重要なことであると思います。


 心血機構では、高いモチベーションを持って私たちの仲間に加わってくれる次世代の先生方に明るい未来を提示できるよう、多くの皆様のご意見を頂きながらこの道を進んでいきたいと考えています。高いレベルの心臓血管外科診療を遍く国民に提供できるシステムを構築するために、是非とも皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2023年1月

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